M&Aの基本概念と流れ

事業承継の解説と方法をわかりやすくご紹介しています。

更新日:2024.07.26

1. M&Aの基本概念

1.1 M&Aとは

 M&Aとは、企業の合併(Merger)と買収(Acquisition)の略です。合併は、2つ以上の企業が1つの新しい企業として統合されることを指します。買収は、1つの企業が他の企業を取得し、支配権を獲得することを指します。M&Aは企業戦略の一環として行われ、規模の拡大や市場シェアの拡大を目指します。M&Aにはさまざまな形態があり、それぞれに異なる目的があります。一般的には、企業価値の向上や競争力の強化が目的とされています。M&Aは慎重な計画と実行が求められるプロセスです。

1.2 M&Aの種類

 M&Aには、主に垂直的合併、水平的合併、多角的合併の3つの種類があります。垂直的合併は、サプライチェーン上の異なる段階にある企業同士の合併です。水平的合併は、同じ業界内で競争している企業同士の合併です。多角的合併は、異なる業界や市場に属する企業同士の合併です。それぞれの合併は、異なる戦略的目的を持って行われます。垂直的合併は、供給チェーンの統合やコスト削減を目指します。水平的合併は、市場シェアの拡大や競争力の強化を目的とします。多角的合併には、異なる業種に参入してリスクを分散し、売上の増加や市場シェアの拡大を図る目的があります。また、資源の最適化やシナジー効果の発揮、競争力強化も期待されます。

1.3 M&Aのメリットとデメリット

 M&Aのメリットには、規模の経済の達成やシナジー効果の獲得が含まれます。また、新しい市場や技術へのアクセスが可能になります。さらに、競争相手の排除や市場支配力の強化が期待されます。しかし、M&Aにはデメリットもあります。統合の難しさや文化の違いによる問題が発生することがあります。また、買収コストが高額になることや、失敗した場合のリスクもあります。これらのメリットやデメリットを慎重に検討することが重要です。

2. M&Aのプロセス

2.1 M&Aの計画と戦略

 M&Aの成功には、詳細な計画と明確な戦略が不可欠です。まず、企業はM&Aの目的を明確に定義します。次に、対象企業の選定と評価が行われます。財務状況や市場ポジション、将来の成長性などが評価の基準となります。次に、買収価格の決定や交渉が行われます。ここでは、適正な価値評価と交渉力が求められます。最後に、統合計画が策定され、実行に移されます。これらのステップを踏むことで、M&Aの成功確率が高まります。

2.2 デューデリジェンス

 デューデリジェンスは、M&Aプロセスの中で非常に重要なステップです。これは、買収を行う対象企業の詳細な調査と分析を行うプロセスです。財務状況、法的リスク、経営状況などが調査の対象となります。デューデリジェンスの目的は、潜在的なリスクを特定し、適正な買収価格を決定することです。専門家による詳細な調査が求められます。調査結果に基づいて、買収の可否や条件が再評価されます。デューデリジェンスはM&Aの成否を左右する重要なプロセスです。

 デューデリジェンスによって、例えば未払いの給与が判明することがありました。そういった場合は、譲渡価額を引き下げるなどして対応することがあります。

2.3 買収後の統合

 買収後の統合プロセス(PMI)は、M&Aの成功にとって非常に重要です。M&AにおけるPMI(統合後の統合管理)とは、買収後の企業を統合し、シナジーを最大化するためのプロセスです。このプロセスには、企業文化の統合、システムの統一、業務プロセスの最適化が含まれます。PMIは、M&Aの成功を左右する重要な要素であり、計画的かつ戦略的な実施が求められます。まず、企業文化の統合が課題となります。異なる企業文化を持つ企業同士の統合は、従業員のモチベーションや業務効率に影響を与えることがあります。次に、システムやプロセスの統合が行われます。ここでは、ITシステムや業務プロセスの統一が求められます。さらに、人的資源の最適化も重要です。適切なリーダーシップとコミュニケーションが統合の成功を左右します。業務プロセスの最適化では、重複する業務を削減し、効率化を図ることが重要です。これらの買収後の統合が円滑に進むことで、M&Aのシナジー効果が最大化されます。

3. M&Aの評価方法

3.1 企業価値の評価

 M&Aにおいて、企業価値の評価は非常に重要です。企業価値の評価方法には、いくつかのアプローチがあります。一般的な方法には、DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)や比較法が含まれます。DCF法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割引いて評価する方法です。比較法は、類似企業の市場価値を基準に評価する方法です。これらの方法を組み合わせて、適正な企業価値を算出します。企業価値の評価は、M&Aの交渉や決定に大きな影響を与えます。

3.2 シナジー効果の評価

 M&Aの成功には、シナジー効果の評価が欠かせません。シナジー効果とは、合併や買収によって生じる追加的な価値を指します。具体的には、コスト削減や売上増加、新しい市場への進出などが挙げられます。シナジー効果を評価するためには、詳細な分析と計画が必要です。まず、シナジーの発生要因を特定します。次に、それぞれの要因がどの程度の価値を生むかを定量的に評価します。これにより、M&Aの全体的な価値が明確になります。

3.3 リスクの評価

 M&Aにはさまざまなリスクが伴います。そのため、リスクの評価と管理が重要です。主なリスクには、財務リスク、法的リスク、統合リスクなどが含まれます。財務リスクは、買収価格や資金調達に関するリスクです。法的リスクは、法規制や訴訟に関連するリスクです。統合リスクは、企業文化の違いやシステムの統合に関するリスクです。これらのリスクを評価し、適切な対策を講じることで、M&Aの成功確率が高まります。

4. M&Aの法的側面

4.1 M&Aに関する法律

 M&Aにはさまざまな法律が関わります。日本では、会社法や独占禁止法が主な法律です。会社法は、企業の合併や買収に関する基本的なルールを定めています。独占禁止法は、市場の競争を保護するための法律です。これにより、不公正な取引や市場独占が防止されます。また、証券取引法もM&Aに関わります。これは、株式の取引や情報開示に関する法律です。これらの法律を遵守することがM&Aの成功に不可欠です。

4.2 デューデリジェンスの法的要件

 デューデリジェンスには法的な要件が含まれます。これは、買収対象企業の法的リスクを評価するためのプロセスです。具体的には、契約書の確認や訴訟リスクの評価、知的財産権の確認などが含まれます。また、労働法や環境法の遵守状況も調査されます。これにより、買収後に発生する可能性のある法的リスクを予見し、対策を講じることができます。デューデリジェンスは、M&Aの法的側面を確保するために重要なステップです。

4.3 規制当局の役割

 M&Aには、規制当局の監督と承認が必要です。日本では、公正取引委員会が独占禁止法に基づいてM&Aを監督します。特に、大規模なM&Aや市場シェアの高い企業同士の合併には、独占禁止法の適用が厳しくなります。規制当局は、競争の公平性を保つためにM&Aの影響を慎重に評価します。また、証券取引等監視委員会もM&Aの適正性を監視します。規制当局の承認を得るためには、透明性と正確な情報提供が求められます。規制当局の役割を理解し、適切に対応することが重要です。

5. M&Aの成功事例と失敗事例

5.1 成功事例

 M&Aの成功事例としてよく挙げられるのが、ディズニーによるピクサーの買収です。ディズニーは2006年にピクサーを買収し、その後の映画制作において大きな成功を収めました。両社の文化とクリエイティビティがシナジー効果を生み出し、ヒット作を連発することができました。この成功の要因は、明確な戦略と文化の統合がスムーズに行われたことです。ディズニーはピクサーの独立性を尊重しながら、リソースを提供しました。このように、相乗効果を最大限に引き出すことがM&Aの成功には欠かせません。

5.2 失敗事例

 一方で、M&Aの失敗事例としては、譲渡後にお金だけ吸い取られて廃業したというニュースを見かけることがあります。そのため、買収先の企業をじっくりと確認する必要があります。突然、経営者が病気などの理由で経営不可の状態に陥った際に、慌ててM&Aを進めるようなことがあるとこの失敗例のような結果になることも考えられます。そのため、ある程度の時間をかけて、計画、準備、実行にうつすことが非常に重要です。

5.3 教訓とベストプラクティス

 M&Aの成功と失敗事例から、多くの教訓が得られます。成功するためには、事前の詳細な計画とデューデリジェンスが不可欠です。また、買収後の統合プロセス(PMI)も慎重に管理する必要があります。特に、企業文化の統合が重要なポイントとなります。さらに、透明性とコミュニケーションを重視することが求められます。失敗を避けるためには、リスク管理と適切な評価が必要です。これらのベストプラクティスを実践することで、M&Aの成功確率を高めることができます。

6. まとめ

 M&Aとは、企業の合併と買収の略であり、企業戦略の一環として行われます。主なM&Aの形態には垂直的合併、水平的合併、多角的合併があり、それぞれ異なる目的を持ちます。垂直的合併は供給チェーンの統合を目指し、水平的合併は市場シェアの拡大を図ります。多角的合併は異なる業種に参入してリスク分散や売上増加を目的とします。M&Aのプロセスには詳細な計画と戦略、デューデリジェンス、買収後の統合が含まれます。メリットには規模の経済やシナジー効果の獲得があり、デメリットには統合の難しさや買収コストの高さがあります。成功事例からは明確な戦略と文化の統合の重要性が学べ、失敗事例からはリスク管理と慎重な計画の必要性が示されています。

 M&Aには非常に専門性が高い言葉が多く並べられていますが、当社ではより皆様に分かりやすいようにかみくだいて丁寧に説明させていただきます。経営者の皆様の想いを引き継ぐことを念頭にぜひ一緒に併走させていただければ幸いです。どうぞお気軽に当社までお問合せください。

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